


「ファイは風景画が好きだなー」

「･･･････。」
「特に、広々とした感じのが好きな感じ。」

「･･･････。」
「そんな怖い顔してこっち見なくてもいいと思うけどなー。」

「話す事なんて無いよ。」
「んー･･･。そう？」

「･･･････。」
「嫌われちゃったもんだなー。ま、当然っちゃあ当然かー。」

「あっち行ってよ。」

「････何で風景画好きなの？」
「話す事なんて無いってば。」

「人間居ないから？」
「･･･････。」

「季節とかあるから？」
「･･････。」

「外の世界だから？」
「･････。」

「そうだよね、俺ら外に出た事ないもんねー。」
「だから、何？」

「･････出てみたい？」
「無理だよ。そんなの。」

「もし出来たら？」
「無理だよ。」

「もしも。」
「うるさい！！
　僕達は一生ここから出られないの！！
　閉じ込められて、上からの命令に従って、死ぬまで自由になれないの！！
　知ってるでしょ？！アンタなら！」

「･･･ファイみたいな天才にも不可能はあるんだー？」
「そんなの、やめてよ。僕はそんなんじゃない。」

「ごめんごめん。」
「消えてよ。」

「んー･･･わかった。絵の邪魔してごめんね。」
「･･･････。」

「いつか模写じゃなくって、本物を目にして描ける様にしてあげるからね。」
「馬鹿じゃないの。」

「そしたら、俺の事許してね？」
「許す訳ないじゃない。デルタにあんな酷い事しておいて。」

「････それも、そっか･･･。」
「フン。」

「･･･････まぁ、いいや。ファイならきっと大丈夫だし。」
「･･･････？」

「じゃあね。」



それから、数週間後。僕の養家が決定した。
かなりの資産家だけど、子供が出来ないと悩んでいた夫婦だった。
彼らの周りの血縁関係もほとんど無かったので、身寄りの無い（という事になっている）僕を引き取る事にしたらしい。
その日から、僕はファイからファフニール・カマンベール・チーズという名前になった。
首に個体認識用のタグを付けて歩く必要もなくなり、認識ナンバー、から人の名前として人から呼ばれるようになった、
そう、外の世界を自由に歩く事も出来るようになった。
とても、そう、本当に嬉しかった。




この養子の話が、元々はイオタにあったという事。
アイツが、この話を断って僕を推薦してくれた事。


知ったのは、結構最近の話。
肝心な事を言わないから、いつも僕は後悔ばかりさせられる。

腹立たしい。