最初は、善意からだった。
幼き日から悪意ばかりを向けられていた私には、素直に受け取る事の出来る感謝や賞賛の言葉はまるで麻薬の様に私へ快楽を与え、中毒性を持った。
しかし、その能力の大きさから賞賛や感謝の言葉に隠された悪意を引き寄せ、気が付けば私は教主という立場へ担ぎ上げられた。
素直な賞賛の眼を向けてくる者達には、希望という名の期待を持たせなくてはならない。
悪意の賞賛の眼を向けてくる者達には、畏怖という名の刃を見せ付けなければならない。
私は、求められる姿を演じ、体現し続ける事を最大の仕事を思い込み、いつしかその思想に全てを乗っ取られ、気が付くと教団を維持する事にしか興味が無くなってしまった。
それが、本来の私を踏み躙り、最初の善意を殺す事になり、結果、本当の善意を向けたかった弱者を踏み躙り殺す事になる事に気付いた時には既に遅く。
本物の薬物の中毒にされ、ただの悪意の道具となった。
これが私だ。
英雄よ、早く私を殺せ。